原作本 写真詩集「希望の木」の紹介

写真詩集「希望の木」

写真詩集 「希望の木」

著 者 新井 満
発 行 株式会社 大和出版

あの大津波の中でたった一本残った松。

『千の風になって』の著者が、失意の底からの希望と再生を、いのちの絆を紡いだ感涙の写真詩集。

2011年11月、NHK「ラジオ深夜便」で作家・新井満氏が朗読し反響を呼んだ詩「希望の木」は、同年写真詩集として刊行されました。 その後、新井満氏は各地で朗読会を行い、多くの人の感動を得ています。


詩の紹介(本文の一部抜粋)

わたしは、松の木です。
海辺に、一本だけ生えている松の木です。
でも、ついこのあいだまでは、たくさんの仲間たちと一緒でした。
日本の東北地方、岩手県は陸前高田市。
太平洋に面した海岸には、それは見事な緑の松林が、弓形につづいていました。
その名も、"高田松原"。
松の木の本数は、七万本。
植林が始まったのは、今から三百五十年も昔。江戸時代初期のことでした。
そんな大きな松林が、今ではどこにも見当たらないのです。
この世からあとかたもなく消えてしまったのです。わたしひとりだけを残して・・・。

「おーい!」
「だれかいませんかー!」
「父さーん!」
「母さーん!」

兄さんや姉さんたち…。多くの友人や知人たち…。
あなたたちはいったいどこへ行ってしまったのですか?
声が嗄れるまで叫びつづけました。でも、どこからもだれからも返事はないのです。

わたしは松の木です。
海辺に、一本だけ生えている松の木です。
わたしは、ひとりぼっちです。
とても淋しいです。
泣かない日は、一日もありません。